ヨチヨチ母日記

アラフォーで妊娠・出産した母の日記

[出産体験記①]おしるしの色はRGBで指定して

このブログには「出産 日赤」というキーワードでやってくる人が多く、その割に出産体験記を書いていないのが申し訳ない気がしてきたので、もう1年も前のことだが記憶を引っ張り出して出産体験記を書くことにした。

日赤医療センター

日赤医療センター

シャーマンのお告げ(助産師の内診)外れる

39週になった私は日赤医療センター助産師の内診を受けていた。妊婦健診でもう慣れたものだが、この内診というのはただ膣に指をそのまま突っ込むという割と原始的な計測方法である。担当の助産師さん曰く、子宮口が全然開いておらず、出産はあと1週間くらい先ということだった。

普通なら指だけで何センチ子宮口が開いてるかなんて分からないように思うのだが、腹の上から触っただけで胎児の姿勢を言い当てたり、逆子を腹の上から直したりと、助産師という職業はシャーマンみたいな不思議さがある。シャーマンが言うことなら神のお告げ同様である。39週に入りいつ陣痛が来るのかとドキドキしていた私は、1週間の猶予が与えられたような気分になってしまい、帰り道は気が大きくなってアイスを買い食いしていた。アイスうまい。

日赤ではソフロロジーのCDを妊婦向けに貸し出しており、助産師さんに強く勧められたので借りて帰ることにした。ソフロロジーとはフランスで始まった出産方法で、呼吸法を整えることでリラックスし、出産時の痛みを緩和するというものである。呼吸ぐらいでどうにかできるもんなら麻酔なんて要らないと思うのだが、日赤は無痛分娩否定派の自然原理主義であるがゆえに、他に痛みを緩和する策もない。大人しく呼吸法をマスターするしかないのである。

おしるしの色はRGBで指定してほしい

翌日(つまり出産当日)、借りてきたソフロロジーのCDを聴いてみた。エレベーターで流れているかのような環境音楽をバックに、中年男性のナレーションが入っている。「それでは森の中をイメージして、ゆっくりと息を吸って〜」だの聞いていると、新興宗教に入った気分になってきた。ほんとにこんなもんが効くのだろうか。半信半疑になりつつも、ぼんやりと耳を傾けていたところ、ソフロロジーの効果か瞼が重くなってきた。

ソフロロジー式分娩

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小一時間昼寝をして起きたのは15時半ごろ。起き上がってトイレに行くと、おりものシートにうっすらピンク色がついているではないか。これはもしや「おしるし」というやつではないか。雑誌などで読んだおしるしは、生理のような鮮血が混じっていたり、ピンクといった色だ。私のは桜の花びらのピンクをさらに薄めたような、本当に申し訳程度のピンク色である。

うーむ、これは本当におしるしなのだろうか。電球の色の加減でピンク色に見えるとか、尿がついただけでは…と何度も目を凝らしてみる。おしるしの色ってどんな色なんだよ、RGBで指定してくれ、と思って「おしるし RGB」で検索したのだが、そんな便利な色指定は特にないようであった。

早とちり破水騒ぎ

なぜ私がこんなに慎重になっているかというと、前に「早とちり破水騒ぎ」というのがあったらである。深夜にトイレに行った際、ドバッと水のようなものが出たのでこれは破水だと騒ぎ病院で診てもらったのだ。病院に着くやいなや車椅子で病棟に運ばれ、リトマス試験紙のようなものを膣に突っ込まれたが結果は陰性。破水だと思ったものはおそらく尿であった。つまり私は「おもらし」で来院し、深夜に看護師や医師の手を煩わせてしまったのである。穴があったらそのままブラジルに掘り進めたいというぐらいのミスである。そんなわけで二度も勘違いで来院という事態は絶対に避けなければならないのだ。

破水パニック、Mac故障とネットスーパーの危機

延々とおしるしの色を検索しているうちに、何やら股の間から生温かい液体がドバドバ出てきた。自分の意思で止めることができない。そして精液のような生臭い匂い。これは間違いない、破水というやつだ。ついに生まれるのだ。どうしよう、どうしよう。もうすぐ生まれるとわかってはいたものの、いざ破水してみると軽いパニック状態である。とりあえず床が濡れてしまうので、大きめの生理用ナプキンをあててタオルを股にはさんだ。

こんな緊急事態だというのにネットスーパーの宅配を頼んでいたことなどを思い出した。まずい。これから病院に行くというのに、宅配の人が肉や野菜が大量に入ったビニールを抱えて困惑する姿が目に浮かんだ。キャキャキャ、キャンセル!キャンセルじゃー!と慌てててPCを開いたが、ビービーというビープ音がして、画面が開けなくなっているではないか。おいおいおいおい!なんでこんなときに限って!いつもPCでログインしていたため、スマホの画面からだとパスワードが思い出せず即ログインできない。この時点で私のパニック度合いはタイタニックに乗っていたレオナルドディカプリオ級である。焦りながら「Mac ビープ音」などで検索して、対処法を検索しているうちに、破水の勢いがチョロチョロからドバドバにギアチェンジしてきた。もはや生理用ナプキンでは抑えきれない勢いである。

ネットスーパーのことは一旦忘れるしかない。とにかく病院に電話だ。ピンクのマタニティノートをめくって、震える手で日赤に電話する。「あの、あの、破水したみたいなんですが」と伝えると、「陣痛はまだきていませんね?」「どのくらいで病院にこれまですか?」と確認される。タクシーで行くと伝えて電話を切り、事前に登録していた陣痛タクシーで病院に向かうことにした。 

陣痛タクシー

事前に登録しておいた陣痛タクシーに電話してみると、「たぬ木様ですね。どうされました?」とコールセンターの女性が出た。電話番号でもう名前やら住所を把握するようなシステムになっているらしい。たしかに陣痛が来た妊婦は冷静に喋れないだろうし、電話番号だけで検索したほうが早いかもしれない。「あのあのあの、破水しまして!配車をお願いします」と早口でまくし立てる。5分で配車できるという回答を得たが、タクシーを呼ぶ前に出産セットを準備するのを忘れていたため、やっぱり15分後にしてもらうようにした。電話口でそんな悠長なことで良いのか、と思われていそうだ。一生に一度の出産だというのに、さっそくADHD特性全開である。

前日に「出産はまだまだですね〜」という会話をしたばかりの私は、出産セットの準備をすっかり怠っており、破水してからワタワタと下着などを詰め込んでいた。それほど下着やら靴下のバックアップを持っているわけではないので、服は後から詰め込めば良いと思っていたのである。完全なる誤算。これから出産する妊婦のみなさんは、私をしくじり先生として出産セットをばっちり準備していただきたい。

マンションの下に陣痛タクシーが来ており、運転手さんが笑顔で出迎えてくれた。タクシーに乗り込んでから夫にLINEで破水したと連絡すると、夫も慌てふためいている。果たして無事に出産できるのか。(続く)

出産体験記の続きはこちら

[日赤医療センター出産体験記②]前期破水で入院 - 38歳高齢出産ブログ